(出典 storage.kadobun.jp)


史実とフィクションを明確に区分している!

1 アルカリ性寝屋川市民 ★ :2018/04/22(日) 20:14:45.02 ID:CAP_USER9.net

気鋭の歴史学者、国際日本文化研究センター(日文研)助教の呉座勇一さん(37)が今春刊行した『陰謀の日本中世史』(角川新書)は、人々の心を捉える歴史上の陰謀論に挑んでいる。「本能寺の変に黒幕がいた」など、研究者らが取り上げない珍説奇説が、社会で一定の支持を得ていることを危惧したからだ。歴史学の手法で徹底批判し、現代のネット社会にあふれる数々の陰謀論にも、警鐘を鳴らしている。(横山由紀子)

心ひかれる「陰謀論」

 前著『応仁の乱』(平成28年、中公新書)が、新書としては異例の47万部突破のベストセラーとなった呉座さん。注目の新刊のテーマは、日本中世史にはびこる数々の陰謀論で、発行部数11万部と好調だ。

 巷(ちまた)には数々の陰謀の「真相」に迫ろうとする本があふれるが、ほとんどが歴史作家や在野の歴史研究家の筆によるものだという。「学界の研究者の多くは、陰謀研究を低級と見下している」と明かしたうえで、人々が陰謀に心をひかれている以上、「学界の人間も正面から取り上げる必要がある」と筆を執った。

「本能寺の変」の真相に迫る

 とりわけ日本史上最大のミステリーとされる「本能寺の変」。「怨恨(えんこん)説」や「黒幕説」など諸説あり、多くの紙幅を割いた。

 織田信長からの非道な折檻(せっかん)や、国替え命令などに怒った明智光秀が謀反を起こしたとされる「怨恨説」。小説やドラマでしばしば採用されるが、「信頼性の低い史料にしか見られない」と反論する。

 怨恨説の根拠とされる事件は、「江戸時代の俗書が創作したもので、歴史的事実ではない」。そうした数々の怨恨話が作られた背景には「江戸時代の人々にとっても、大恩ある君主信長に反旗を翻した事実が不可解だったということだろう」としている。光秀の謀反は、いつの時代も大衆の心をとらえて離さない謎なのだ。

 豊臣秀吉が陰で操っていたという「黒幕説」は、「結果から逆算した陰謀論」にすぎず、「最終的な勝者が全てを予測してコントロールしていたと考える陰謀論の特徴」とみる。

 平治の乱における平清盛、関ケ原の戦いにおける徳川家康の黒幕説なども同様で、「時代を超えて共通のパターンがある」と強調する。

 光秀謀反の動機として注目されるのが、信長の四国政策転換説だ。光秀が交渉役となり関係を保っていた土佐の長宗我部(ちょうそかべ)氏の討伐を信長が決定したことで、面目を失った光秀が謀反を起こしたというもので、近年主流化されつつある。

偉人伝は実像か

 平家討伐で功績を挙げながら兄の源頼朝に追われ、悲惨な最期を遂げた源義経や、冷淡なイメージが強い頼朝の実像、またわが子を将軍に就けようとして応仁の乱を招いたといわれる室町幕府8代将軍の正室・日野富子の悪女説の実態などを、最新の研究に照らして解説している。

 また、家康や信長ら歴史上のリーダーの生涯が、偉人伝としてビジネス本や自己啓発本で取り上げられることについて、「果たして、それが実像なのかどうかが問題」と話す。

 「信長や家康のように明確なビジョンを持て」という言説も、結果的な勝者が、未来を予測していたとみてしまう陰謀論の特徴からくるもので、「家康や信長が全てを見通せていたわけではない。判断ミスや見通しの甘さ、弱点もあったし、しょっちゅうだまされ、何度も存亡の危機に陥っている」と解説する。

 むしろ、「逆境の時のリカバリーや危機管理の手法こそ学ぶべき」と提言する。

真偽見極める思考

 人々は、陰謀論の存在を想像したり、真相を解き明そうとするのが好きだ。しかし、「簡単に信じ、取り込まれてしまう心理、物の考え方が心配」と語る。

 ネット社会の現代には、玉石混交のニュースがあふれる。「反日勢力の陰謀」「安倍政権の陰謀」…など、複雑化する現代社会を陰謀論で説明しようとする危うさもある。陰謀論の特徴を見抜き、「何が本物で、何が間違っているかを見極める論理的思考が大切」としている。



産経WEST 2018.4.22 12:00
http://www.sankei.com/west/news/180422/wst1804220003-n1.html


【【敵は本能寺にあり?】「本能寺の変」「関ケ原の戦い」…溢れる歴史事件の陰謀論に挑む「陰謀の日本中世史」】の続きを読む